第2章 概要

この章では、飽食飽和の時代になった製造業のあり方としてデマンド型のサプライチェーンマネージメントが大事であり、同時に販売拡大・利益拡大をもたらすマネージメントが求められている。そのための4つの方策(①組織と業務改革 ②フレキシブルな受注・生産・購買方式 ③計画指示主導型の実行方式 ④フィードバックコントロール方式)を提示している。その4つの方式を実現する3階層モデリングを説明します。


第2章

15:プロセス製造業の基盤強化の一つは企業内デマンド型サプライチェーンマネージメントの発展 

日本の消費者は飽食・飽和な状況になり、結果として少量多品種生産・製品提供の即時化を求められています。そうすると製造業はコストの高い製造や在庫増加という現象を必然的に招いてしまいます。そこでサプライチェーンマネージメントがなすべき事は、そのような制約条件のもとに製造コスト・物流コスト・販売コストを小さく、製品や原材料の在庫を小さくしていくマネージメントが必要になってきます。業務機能と業務プロセスの変革が必要になってきまが、その場合のティピカルな課題を挙げてみました。



16:デマンド型サプライチェーンマネージメントを実現する方策

デマンド型のサプライチェーンとは、顧客の志向にあわせながら生産と商品提供する場合のサプライチェーンですが、各製造業はこの視点にたった企業変革をする事を迫られています。その場合、現在のような販売・受注、購買、生産などの縦割り組織構造では、いかにIT機能を活用しようと、部門最適の考えから抜け切れません。部門最適は全体最適にならないのです。ここに製造業が早く気がついていただきたいわけです。 まづやるべきことは受注生産購買の司令塔部門をつくり全体最適な計画とコントロールを行ってもらうのが何より優先すべき課題です。  この全体最適を考えた司令塔にもとづいてフレキシブルな受注生産購買方式を実現し、実行部隊は計画と実行指示に基づいたジャストインタイムな実行を可能とします。また実行結果を計画と照らし合わせ、計画の遅れ、生産未達などのフォローをする事になる。これも司令塔の責任と言えます。



17:SCM対応の組織変革-受注生産購買物流司令塔と実行部門-

受注生産購買の司令塔部門は、全体最適な運営をする(生産すれば、売れるがコスト増のために受注しないという解もありうる)責任をもってもらうことになります。コスト責任・在庫責任・供給責任などです。そのもとに受注生産購買の計画・スケジュールを作成し実行部隊に指示を出すジャストインタイム方式にすべきです。



18:フレキシブルな生産販売購買物流方式

受注生産購買の司令塔部門の統合により、製品供給に欠品をおこさないか、販売見通しはどうかなどから、原材料購買の計画、生産スケジュールなどを一か所で検討する環境が可能になり、何の計画を優先するかを製品毎に考える事が可能になります。また同じ人が考える事から同時に製品需給、原材料需給、生産需給など総合的に捉えることができ、業務スピードの大幅アップ、要員の効率化などのメリットが発生します。 計画を従来の部門毎に作成していくとフレキシブ性を欠き、計画が部門間を行ったり来たりで業務スピードにも欠ける事になります。 各種需給バランス、スケジューリングなどの計画づくりをトライアンドエラー方式でコンピュータシステムが提供されればフレキシブルな生産販売購買物流方式が可能と言えます。



19:計画・予定・指示主導型の実行方式とフィードバックコントロール

受注生産購買の司令塔部門が作成した生産スケジュール(製造、入出庫、検査、出荷など)に基づいて現場へ作業指図を発行する計画・指示主導型の実行方式をとることにより、現場都合による作業でなく司令塔部門の指示による作業になります。次に作業指示のタイミングが問題になります。 実績のフィードバック監視が徹底できれば指示する作業の前後の作業状況と作業条件をふまえた作業指示を発行するタイミングを設定可能かと思われます。ジャストインタイムの実行方式が可能になります。 離散型の製造プロセスでは人間作業や在庫が発生するのでこれを考慮したJIT方式になりますので、これを筆者はLJIT方式(logistics flow just in time)と呼んでいます。

また作業実績をリアルにモニタリングする事により指示を出した作業の進捗状況を把握でき、計画との差異を把握し次の司令塔の計画変更に対処してもらう環境をつくっておくべきと考えています。



20:SCMとシステムデザイン3階層モデル

SCMに関するシステム構築を行う場合のシステムデザイン3階層モデルを示しています。但し全ての機能を表したのでなく、あくまで例示です。